人生に好奇心を!

好奇心を原動力に、人生における様々な事柄を試してみるブログです。

資格解説:電気主任技術者とは 〰電気の知識で社会貢献できる資格〰

どのような資格?

電気主任技術者とは

 端的に言えば、電気設備の保安監督者になるために必要な国家資格です。

電気事業法により、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、事業用電気工作物の設置者は責任者を選任しなければなりません。この責任者になるために必要な資格が電気主任技術者です。

 

注1:事業用電気工作物とは?

 事業用に使用する(つまり、一般家庭で使用しないような)電気設備、という意味です。発電所、送電線、変電所、配電のための設備などが事業用電気工作物に該当します。なお、事業用電気工作物でない電気工作物(一般用電気工作物と言います。一般家庭や小規模な店舗で用いる電気工作物です)の保安には電気主任技術者は必要ありません。当然ですが、家庭や小規模な店舗の管理に電気主任技術者は不要です。

試験の詳細は 

試験の詳細(日程、試験問題等)は下記を参照。

shiken.or.jp 

電気主任技術者は3種類ある

 電気主任技術者には以下の3種類があり、事業所の規模により必要な資格が変わります。

 

 ・第一種電気主任技術者免状

   すべての電気工作物 の保安の監督が可能

 ・第二種電気主任技術者免状

   170,000V未満の電気工作物 の保安の監督が可能

 ・第三種電気主任技術者免状

   50,000V未満の電気工作物 の保安の監督が可能

 

 第一種は最上位資格であり、これさえ取得すれば、第二種・第三種の部分も含めすべての電気工作物の監督の業務が可能ですから、第一種だけ取得すればOKです!…と言いたいところですが、資格取得の難易度は格段に高いです。資格取得の難易度が高い分、第一種を保持していれば周囲から一目置かれるでしょう。

 第二種は170,000Vまで監督することが可能です。電力会社を除けば、170,000Vを超える電気設備はそうそう多くありませんから、電気主任技術者が必要とされる事業所でも、第二種で間に合う事業所は非常に多いです。勉強時間に費やすコストと資格取得で得られるメリット(パフォーマンス)の割合で言えば、第二種が最もコストパフォーマンスに優れていると筆者は考えています。

 第三種は3種類ある電気主任技術者資格の中では最下位資格であり、強電系業務の就業者(あるいは就業しようとしている者)の登竜門的資格となっています。高校生から定年退職した世代まで、幅広く受験生がいます。第三種でも社会的評価は高いことから、取得の意義は十分にあります。

電気工事士や電気施工管理技師との違いは?

 よく混同されがちな2つの資格について、電気主任技術者との違いは以下のとおりです。

 

■電気工事士:実際に自分が作業員として電気工事を行うために必要な資格

→電気主任技術者は自分で手を動かして工事をするわけではありません。工事計画の立案など、あくまでも責任者・管理者としての立場で業務を実施します。また、工事だけではなく維持及び運用(の監督)も重要です。むしろ、工事よりも維持及び運用の方が主たる業務です。

 余談ですが、一般用電気工作物(家庭で使用する電気工作物)の管理に電気主任技術者は不要(上記の注1を参照)でしたね。これに対して、電気工事に関しては一般用電気工作物であっても、電気工事を実施する者は電気工事士である必要があります。これはもちろん、安全を担保するためです。

 

■電気施工管理技士:工事会社で現場監督をする際に必要な仕事です。

→電気施工管理技士についての詳細は電気施工管理技師のページを参照。

 

電気主任技術者のまとめ

 上記事項を要約すると、

  • 発電所や変電所などの事業用電気工作物には電気設備責任者の選任義務あり。
  • 責任者は、国家資格である電気主任技術者の取得者でなければならない。
  • 電気主任技術者は工事、維持及び運用に関して保安の監督をする。
  • 電気主任技術者には3種類(第一種、第二種、第三種)ある。
  • 電気工作物の電圧に応じ必要な資格が変わり、第一種が最上位資格である。

 ということですね。なんとなくご理解いただけたでしょうか?

 

取得するメリットは?

1.キャリアアップが見込める

 電気主任技術者として採用されれば、事業所における電気設備の責任者となり、給与面などの待遇向上が期待できます。また、法的な設置義務があるため、有資格者に対するニーズは今後も途切れることなく、転職する際にも有利です。もちろん、電気主任技術者の有資格者は事業所の責任者(電気主任技術者)になる資格がある、というだけであり、必ず責任者になれるわけではありません。当然ながら、責任者は一人しかなれませんので、大規模な事業所であればむしろ責任者(電気主任技術者)になれない可能性の方が高いでしょう。それでもなお、本資格を取得すれば電気設備に関する一定の知識を有していることの証明になり、転職や昇進で有利です。

 

2.年齢に関係なく活躍することが可能

 作業員としてではなく、監督(管理責任者)としての資格ですから、それほど体力を要求されません。要求されるのは、体力よりもむしろ知識や経験です。そのため、高齢となっても電気主任技術者として活躍することが可能です。大企業を定年退職後、別の事業所で電気主任技術者として雇用された、という事例もよくある話です。

 

3.電気屋(強電系)としての自己研鑽に有効

 試験勉強を通して、強電系の知識を取得・強化することが可能です。電気主任技術者としての業務に興味や関連がなくても、強電系の業務をしている方は、知識のブラッシュアップとして有効ですのでオススメです。 一方、弱電系の業務をしている方には、直接的に業務に役立つことはあまりないでしょう。

 

取得までの最短勉強時間は?

 筆者の独断と実際の受験体験による、合格までに最低限必要な勉強時間は以下のとおり。

*平均的な勉強時間という意味ではありません。「最低限これぐらいの勉強時間を確保しないと受からないよ」あるいは「効率的な勉強をすればこれぐらいの勉強時間でも合格可能だよ」という意味です。つまり、大多数の受験生は下記の時間より多くの勉強時間が必要でしょう。

ちなみに筆者は電気系ではなく情報系の出身で、電験の勉強をするまで「三相交流って何?」というレベルでした。 

 

第一種合格までに必要な勉強時間

 ・50時間(大学で電気工学を専攻し、強電系の業務に就業している)

 ・80時間(大学で電気工学を専攻し、相当強電系の知識がある)

 ・100時間(第二種合格者だが第一種レベルの知識はない)

▷難関で知られる第一種ですが、工学部の定期テストや大学院入試と似たような問題が出題されたり、実際の業務に密接に関連した知識問題が出題されたりするので、受験者によっては相当有利になります。昭和の時代には司法試験より難しい、などと言われた伝説的な資格ですが、平成以降は出題方法、問題の傾向や難易度の変更により、易化しています。そのため、取得も決して夢ではありません。

 

第二種合格までに必要な勉強時間

 ・50時間(大学で電気工学を専攻し、相当強電系の知識がある)

 ・150時間(第三種合格者だが第二種レベルの知識はない)

▷第三種から第二種は一気にハードルがあがります。特に、要求される数学のレベルが高校レベルから大学レベルへと飛躍し、微分方程式、ラプラス変換といった高度な数学テクニックが要求されるます。といっても、扱う数学の公式やテクニックはパターンが決まっていますし、数学的なセンスが求められるわけでもありません。工学部・理学部出身の方であれば難なく対処できるでしょう。

 

第三種合格までに必要な勉強時間

 ・20時間(大学で電気工学を専攻し、相当強電系の知識がある)

 ・50時間(高校で理系だった。高校レベルの数学や電気理論なら理解している)

 ・300時間(高校で文系だった。数学や電気の知識は中学レベル)

▷扱う数学や電気理論は概ね高校レベル。工学部電気系学科の学生であれば、参考書は不要で、過去問を繰り返すことにより合格することが可能です。高校・大学が文系だったという方でも、高校レベルの基本的事項から勉強すれば合格が可能です。

勉強方法は?

 具体的な勉強方法は各資格解説をご覧ください。

 

難関資格ではありますが、取得するだけの価値はあります。もしあなたが強電系の業務に就業しているか就業を目指しているなら、ぜひ取得をおすすめします。がんばってください。