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技術士 口頭試験を不合格になるための研究 その④〜口頭試験の想定質問と回答( PART 3/4)〜☆

口頭試験の想定質問と回答:ダメな回答と良い回答 その3

  本記事では口頭試験でよく問われる質問に対して、ダメな回答と良い回答を掲載しています。なぜダメなのか・良いのか、その理屈をおさえれば、自分なりの回答集を作成できるでしょう。自分なりの回答集が作成できれば、合格に一気に近づきます。

 

Q.技術士とは、どのような存在でしょうか?

×「技術士法の定める試験に合格した者が技術士です」

「技術士とは、科学技術に関する高度な専門知識と応用能力を有すると国家に認定された技術者のことです」

→面接官の質問の意図は、”あなたは技術士になろうとしているけど、そもそも技術士は何をする人か本当に分かったうえで目指していますか?”ということ。”試験に合格した人”では技術士が何をする人なのかわかりませんので、まったく回答になっていません。模範解答は法律上の定義を無難にまとめたものです。

 ちなみに、試験に合格するだけでは技術士を名乗れません。試験合格後、さらに(高額な登録料を支払って!)技術士登録簿に必要な事項を登録して初めて技術士を名乗れます(技術士法第32条) ×の回答は完全に事実誤認であり、この観点からも0点の回答です。合格すればOKというわけではないことに注意してください。ちなみに、登録料は3万円以上します。。。

 

Q.技術士制度(技術士法)はなんのためにあると思いますか?

×「技術者の力量を客観的に測定し、優れた技術者を選抜するためです」

○「技術士制度は専門的学識や能力、倫理などの面において信頼できる技術者を認定する仕組みです。科学技術の向上と国民経済の発展のためには、そのような信頼できる技術者が不可欠であるため、技術士制度があると思います」

→ 技術士法の第1条を復習しよう。なぜこのような技術士法(技術士制度)があるのか?という根本的な問いは、技術士の存在価値や、どうあるべきかを教えてくれます。ポイントは、認定制度があるから技術者の信頼性が担保できること、科学技術の向上と国民経済の発展が目的(=世のため人のため)であること、です。×の回答では、優れた技術者を選抜したからといってそれが何になるの?という疑問がわく回答ですよね。疑問がわくということは、「なんのために?」という質問の回答になっていないわけで、0点。

 

Q.海外の技術士制度について、知っていますか?

×「はい、知っています。APECエンジニア制度やIPEA国際エンジニア制度があります」

「同様の制度としては、アメリカのPE(プロフェッショナルエンジニア)制度や、英国のCE(チャータードエンジニア)制度、アジア各国におけるPE制度があります」

→APECやIPEAは技術者(士)の国境をまたいで相互認証する国際的な仕組みのことですので、各国の技術士制度ではありません。論点がずれた回答なので、減点される可能性があります。ご注意ください。

 日本の技術士制度は海外(主に米国)の制度を参考に戦後成立したものです。海外の制度をお手本としているわけですから、海外の技術士制度も簡単でよいので把握してください。また、技術士という資格は海外でも通用する国際的な資格です。これが、他の国家資格(=国内でしか通用しない、海外の制度は知らなくても問題ない)とは違うところです。国際的な制度も必ず把握してください。例えば、技術士に求められる資質(コンピテンシー)もIEA(国際エンジニアリング連合)に準拠しています。

 

 下記は各国の技術士制度に関するレポートです。諸外国の実情をみると面白いですよ。例えば、日本だと技術士の合格平均年齢は43歳ですが、米国だと24-28歳となっており、若手のうちに取得する資格です。日本と米国のギャップは一体どこから来ているのでしょうか?このようなことも調べてみると面白いですよ。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu7/017/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/11/30/1411399_004.pdf

 

Q.APECエンジニアとIPEAエンジニアとの違いを教えてください

×「わかりません」

○「APECエンジニアは15のエコノミー(地域または国のこと)、IPEA国際エンジニアは16のエコノミーで有効です。またAPECエンジニアの登録は11の技術分野に分かれていますが、IPEA国際エンジニアには技術分野の区分がありません(つまりIPEA国際エンジニアには部門表示もなし)」

→上記の項目以外は、似通った制度です。例えば、エンジニアリングの学歴要件と7年以上の実務経験が必要な点も同じ。あまり細かいことを覚えてもしょうがないのですが、エコノミーの数が違うこと、技術分野区分の有無の違いがあること、は覚えておきましょう。

 

Q.業務でつかう重要な基準について教えてください。

×「社内基準と客先基準です」

○「JISJEMJEC、技術基準、内線規定、IECです」

→業務に習熟していることを示すために、最低でも3つぐらいはあげましょう。また、社内基準や客先基準といった独自基準よりも、幅広い視野と経験、つまり社外でもどこでも汎用的に通用する技術者であることをアピールするために、パブリックな基準を提示したほうがよいです。

  • 建設:ISO, 建築基準法, 公共建築工事標準仕様書,,,etc
  • 機械:ISO, JIS,ANIS,ASME,,,etc
  • 電気:JIS, JEM, JEC, 電気設備の技術基準, 内線規定, IEC規格,,,etc

 上記の質問では、基準が法律に置き換わることがあります。業務でつかう法律もすぐに回答できるようにしてください。技術者倫理では、”業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること”が求められています。遵守するにはまず知っていなければなりませんよね。したがって、これは技術者倫理に関する質問というわけです。

 

Q.CPDはどのような意味ですか?また、なぜCPDが必要なのですか?

×「日々の研鑽のことです。必要な理由は技術士法第47条の2に資質向上の責務が明記されているためです」

○「Counting professional development、つまり継続的な研鑽のことです。技術的に陳腐化することを防ぐためです」

→法律で必要だから、は自分の頭で何も考えていない証拠であり最悪の回答。なぜ法律で規定されているのか?という背景が問われているのですから。また、言葉は正しく使用しましょう。”日々の”という言葉は”毎日の”という言葉と同義ですが、さすがにCPD制度は毎日勉強しろと要求しているわけではありません(CPDは年間平均で50時間の研鑽を要求しています)

 

Q 技術士に求められる CPD 単位数は、どれぐらいが知っていますか?

×「年間100時間、、、ぐらいだと思います」

○「年間平均50時間です」

→知ったかぶりをするぐらいなら、「すみません、緊張してど忘れしました」と言いましょう。答えは年間50時間です。なお、英語の学習など、技術とは無関係の事項であっても、CPDとして認められることに注意しましょう。

技術士CPD(継続研鑚) Q&A|公益社団法人 日本技術士会

<補足:技術士に求められる資質能力「継続研さん」の説明としては、「今後,業務履行上必要な知見を深め,技術を修得し資質向上を図るように,十分な継続研さん(CPD)を行うこと。」とあります。英会話能力、商取引の知識、といった非技術要素も業務履行上必要ですよね。非技術要素の学習もCPDのうちですので、誤解なきよう>

 

Q.特許や論文に関してはどうでしょうか?

×「特に経験がありません」

「まだ経験がありませんが、今後の課題としております。3年以内に△を、、、」

→あなたの専門にもよりますが、はったりでもよいので今後積極的に取り組むということをアピールしましょう。 

 

Q.資質向上(あるいはCPD)のためにどんなことをしていますか? (あるいはこれから実施していきますか?)

×「社内業務を積極的に取り組み、社内のベテランエンジニアから指導を受けています」

○「ネットで最新の情報を収集しています。また、△学会に所属し、学会の専門誌を行動区したり、セミナーに参加しております。また△の資格を取得しました」

→業務に直結しないこと、で述べましょう。業務に直結すること以外であれば、なんでもよいです。一部の参考書には、”セミナーの受講といった受動的な活動ではなく、学会発表や論文発表といった能動的な活動を回答しましょう”、と記載されていますが、みんながみんな学会発表や論文発表をする立場ではないですもんね。なお、学会に所属するのはオススメです。お金を払えばだれでも加入できますので。

 

Q.資質向上のために、セミナーに参加しているとおっしゃいましたが、最近参加したセミナーを教えてください。

×「忘れました、、、」

○「昨年の前半に開講された、△学会の△セミナーです。これは△を講師に迎え、△に関して講習を実施したものです。私はそこで△ということを学びました」

→具体的に答えられないと、ウソと判断される可能性があるのでくれぐれもご注意を!

 

Q.業務遂行をするうえで、技術者倫理に関しては何を留意していますか?

×「技術者として誠実に職務を行います。また、最新の法律改正を見逃さないようにし、違反行為がないように留意します」

○「3 義務 2 責務や技術士倫理綱領に基づき、公益確保を最優先としつつ他の義務責務や倫理項目も可能な限り満足するように留意しています」

→持続可能な社会(技術と環境の調和)に貢献する、や資質向上に務める、といった回答でもよいと思います。”誠実に”では何を留意するか具体性がないからダメ。また、法律を守ることは当然であって、法律を守ればそれだけで倫理的であるとは言えません。倫理とは、法律遵守+プラスアルファの存在です。

 

技術士を目指す方は、覚える必要はありませんが、以下をご一読ください。技術者倫理で求められている事項です。

”業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で,社会,文化及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代に渡る社会の持続性の確保に努め,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること”

 

Q.公益確保を最優先しますとおっしゃいましたが、具体的にはどのようなことでしょうか?

×「すべての人が使いやすいようなユニバーサルデザインを心がけ、またコストにも配慮して社会負担が増加しないような製品づくりを心がけます」

○「自分の生み出す製品の安全性の確認に一切の妥協をしません。設計段階では徹底的な検証をし、公共の安全の確保に努めます。また、環境との調和にも配慮し、環境負担に留意します」

→×の回答も一見悪くありませんし、この回答でももしかすると得点できるかもしれません。しかしながら、「公益」の定義ってなんでしたか!?技術士の世界では、「公益」という言葉の意味は「安全&環境」への配慮でしたね。したがって、安全と環境という切り口で語りましょう。デザインやコストよりも、安全が第一なのです。建設や製造業で従事するエンジニアなら、身に染みてお分かりのことでしょう。

 技術者がどのように公益を確保するのか?と問われたら、安全を確保すること、これが最初の1歩です。環境性、コスト、デザインなどももちろん公益の要素ですが、安全を確保することよりは優先度は低いです。

 

 技術士 口頭試験対策の第一歩 

 不合格になるための研究その① :口頭試験を受験する際の基本

 不合格になるための研究その②:口頭試験の想定質問と回答( PART 1/4)

 不合格になるための研究その③:口頭試験の想定質問と回答( PART 2/4)

 不合格になるための研究その④:口頭試験の想定質問と回答( PART 3/4)(本記事) 

 不合格になるための研究その⑤:口頭試験の想定質問と回答( PART 4/4)