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資格解説:技術士 総監部門の記述問題のコツ その1

技術士 総監部門の記述問題の書き方

 本ページでは、総監部門の記述問題の書き方のコツを述べます。総監部門の受験生の大多数は既に一般部門に合格している方でしょうから、一般部門に既に合格していることを前提として記載します。

 総監部門の記述問題で加点をもらうコツは、次の4つです。

  1. 一般部門と総監部門で問われる能力の違いを意識すること
  2. 5つの管理のうち、どれを用いているか明記すること
  3. メリットとデメリットの両方を書く設問ではトレードオフの関係を回答すること
  4. 設問の長文に惑わされず、素直に設問に答えるこ

<一般部門と総監部門で問われる能力の「違い」を意識すること>

違いその1:技術力を問われるか、技術力プラスアルファを問われるか

 一般部門の試験では、あなた自身の専門分野の知識・経験・業務遂行能力、言い換えるならば技術力が問われます。機械屋であれば機械の、電気屋であれば電気の、化学屋であれば化学の、知識・経験・業務遂行能力が十分に備わっているか問われます。

 総監部門の試験では、(一般試験には合格していることが前提なので)受験生が自分の専門分野の知識・経験・業務遂行能力があるのは当然として扱われます。したがって、試験で問いたいのは、あなた自身の専門の知識・経験・業務遂行能力ではありません。本当に問いたいのは、技術力プラスアルファの要素です。技術力プラスアルファとは何か?それは幅広い視点を有しているかどうか、です。幅広い視点は、総監部門では「5つの管理」というキーワードで表されます。まずは下記の文部科学省のキーワード集をご覧ください。問われる事項が何となく分かるのではないでしょうか。

総合技術監理部門の技術体系(キーワード)について:文部科学省

例をあげましょう。

「◯◯の建設工事を円滑にすすめるためにはどうすればよいか?」というお題があるとします。一般部門であれば、その着目点は「ICT技術を活用する」のように、技術力を前面に出した回答で構いません。一方、総監部門では技術力のみをアピールする回答ではダメです。「若手技術者の教育を進めることで早期戦力化を図り、マンパワーの増強を実施する(人的資源管理)」のように技術力プラスアルファ(=5つの管理)の要素を含む回答が必要です。

 総監部門の試験は、技術力だけを問いたいわけではない、ということをまずは強く意識してください。

違いその2:名選手か、名監督か

 総監部門の総監という言葉は何を意味しているでしょうか?総監(総合的な理)とは、俯瞰的かつ総合的な観点から業務を理することです。つまり、マネジメント業務、平たく言えば監督の業務を指しているのです。

 一般部門では、「あなた自身がうまく行動できるか」、言い換えるならプレーヤー技術者としてあなたは名選手ですか?が問われます。総監部門では、「あなたは周囲をうまく行動させられるか」、言い換えるならマネジャー技術者としてあなたは名監督ですか?が問われます。したがって、プレイヤーではなくマネジャーの視点で論述問題を回答しましょう。いつまでもプレイヤーの視点で回答していると、永遠に合格しませんよ。

 ただし、勘違いしてほしくないのは、マネジャー = 部下がいる立場の人、ということを意味しているのではありません。技術士が想定するマネジメントとは、つまるところ4つのM(Man, Machine, Material, Method)の管理です。たとえ新入社員や若手社員であっても、現場の資材を管理したり、ベンダーのコントロールをしたり、会議の日程を調整したり、作業方法を工夫したり、ちょっとした予算を管理したり、といった業務の管理を実施するのが普通でしょう。これらも立派なマネジメント業務のうち、です。自分は部下がいない平社員だからマネジメントの経験がない、だなんて誤解しないでくださいね。例え部下がいなくても、技術者であれば、誰だって大なり小なりマネジメントを遂行しているマネジャーなのです。

違いその3:メリットに着目するか、リスクに着目するか

 一般部門では、私の技術力を用いてよい製品を作れます!ということの能力アピールが第一です。あえて造語で言うならば、「メリット型の提案」ができる技術コンサルとでも言いましょうか。

 総監部門では、このようなリスクがあるから、こういう対策をします、というリスクマネジメント能力があることの能力アピールが第一です。こちらも造語で言うならば「リスク発見型の提案」ができる技術コンサルとでも言いましょうか。

 例をあげましょう。

一般部門:

 ◯◯という課題をICT技術を用いて解決します。(解決できてハッピー!)

 ◯◯という工事を△△の施工法により、工期を短縮する。(短縮できてハッピー!)

 ◯◯という製品を△△の手法により、効率向上させる。(性能アップでハッピー!)

→これだけのメリットが発生(する技術提案ができる技術コンサルですよ)、とメリットを提案することが大切。

総監部門:

 ◯◯という課題をICT技術を用いて解決するが、情報漏洩の対策として△△を実施する。

 ◯◯という工事を△△の施工法により、工期を短縮するが、安全管理がおろそかになるおそれがあるので、対策としてXXを実施る。

 ◯◯という製品を△△の手法により、効率向上させるが、その代わりコストが上昇するので本当に重要な部分のみ効率向上させてコスト上昇を抑制する。

→良いことばかりではなく、これだけのリスクが発生することを予見できるベテラン技術者であり、その対処法も提案できますよ、とリスクを提案することが大切。

トレードオフの関係

 ある課題に対して、どのような技術的解決策を用いても、メリット(ベネフィット)の裏にはデメリット(リスク)が必ずあります。そしてメリットの増大を図る時、望まなくてもデメリットも増大してしまうのが普通です。

 わかりやすい例で言えば、性能を向上(メリットの増加)させると、コストの上昇(デメリットの増加)を招く、ということが挙げられます。これがいわゆる、「トレードオフ」の関係です。トレードオフの関係は決して難しいものではありません。「技術士 トレードオフ」でググってみてください。たくさんの実例がヒットしますので、それらを見てもらえれば、すぐに「トレードオフ」の考え方になれると思います。

 総監部門で問われるのは、あなたは、技術的解決策のメリットだけに着目せず、その裏側のリスクをきちんと把握していますか?そのリスクを踏まえた上で、バランスのとれた最適な解決策をとれますか?というリスク・マネジメント能力なのです。

 過去問を解いていくうちに、上記のことはすぐに理解できるようになるでしょう。本日はここまで!