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資格解説:技術士 総監部門の記述問題のコツ その3

技術士 総監部門の記述問題の書き方

 本ページでは、総監部門の記述問題の書き方のコツを述べます。総監部門の受験生の大多数は既に一般部門に合格している方でしょうから、一般部門に既に合格していることを前提として記載します。

 総監部門の記述問題で加点をもらうコツは、次の4つです。

  1. 一般部門と総監部門で問われる能力の違いを意識すること
  2. 5つの管理のうち、どれを用いているか明記すること
  3. 懸念事項はトレードオフの関係で回答すること
  4. 設問の長文に惑わされず、素直に設問に答えること

それでは下記で具体的に見ていきましょう。

<懸念事項は解決策とトレードオフの関係の事象を回答すること>

トレードオフの関係になっていますか?

 論述問題の最後の設問では必ず、「留意すべき影響(これがデメリットやリスク)を述べよ」、「乗り越えるべき課題(=今のままじゃダメだよ、という事象があるということなのでデメリットやリスク)を述べよ」、「障害(これももちろんデメリットやリスク)は何か」というように、懸念される事項を問われます。

 例えば、設問3は「解決策を提案せよ」、設問4が「デメリットやリスクを述べよ」という問題であったとしましょう。

 設問3であなたが「Aという解決策を提案」した場合、設問4では「Aという解決策でトレードオフ的に発生する懸念事項」を回答しなければなりません。もし、設問4で「Aとはトレードオフの関係にないデメリットやリスク」を述べた場合、大幅な減点は避けられません。

 もう少し具体例を見ましょう。

 

悪い例:「少子高齢化に伴う設計者の人手不足という問題がある(これが業務上あるいは社会上の問題点)。これを解決するためにAIやICT技術を活用した設計の自動化を推進する(これが解決策の提案)。リスクとしてはAIやICT技術を用いたシステムの導入に時間がかかる可能性がある(これが懸念事項の指摘)」

 

良い例:「少子高齢化に伴う設計者の人手不足という問題がある(これが業務上あるいは社会上の問題点)。これを解決するためにAIやICT技術を活用した設計の自動化を推進する(これが解決策の提案)。リスクとしては、設計のブラックボックス化が進むことで若手技術者の力量が低下する可能性がある(これが懸念事項の指摘)」

 

 上記において、なぜ悪い例は悪いのかわかりますか?新技術を導入するときに、時間を要する、というのは確かにリスクの一つです。でも、トレードオフの関係ではありませんよね。

 ・AIやICT技術の導入を推進(という解決策がうまくいく→うれしいこと) ⇄   AIやICT技術の導入に時間を要する(というリスクが減少する→うれしいこと) 

 これは一方の事象で良いことが起きれば、他方も良いことが起きるわけで、俗っぽい言い方をすれば、Win-Winの関係です。Win-Winの関係はトレードオフの関係ではありませんね。

 

 トレードオフの関係は一方の事象で良いことが起きれば、他方は良くないことが起きる関係な訳です。

 ・AIやICT技術の導入を推進(という解決策がうまくいく→うれしいこと) ⇄  若手技術者の力量が低下する可能性(というリスクが増加する→うれしくないこと) 

 良い例では、上記のとおり、一方でうれしいことは、他方ではうれしくないことにつながるわけです。これがトレードオフの関係です。AIやICT技術はどんどん取り入れいたい、だけどそれがうまくいくと若手の力量が低下する、というジレンマ板挟みの関係があるわけですね。トレードオフというカタカナに馴染みがなければ、板挟みの関係は何だろう?と日本語で考えてみるのも手です。

 過去問を解く時は、必ず「あなたの提案する解決策」と「あなたの懸念する事項」がトレードオフの関係になっているか、必ずチェックするクセをつけてください。

 トレードオフの関係を回答しない限り、永遠に合格しません。良くも悪くも、それが総監部門の試験スタイルなのですから、従わざるをえません。

トレードオフの関係は別の管理の視点で

 もう一つだけ注意点を挙げます。AとBでトレードオフの関係を述べる場合、基本的には別の管理の視点で述べてください。Aが経済性管理の視点の事象であれば、Bは安全性管理の視点の事象を記載する、など別の管理の視点同士のトレードオフをあげてください。これが、視野の広さのアピールになります。

 例えば、

良い例:「解決策として、、、により工期を短縮する(経済性管理)。この場合、リスクとしては、納期がタイトになることにより労働災害発生の確率が増加することが挙げられる(安全性管理)」

悪い例:「解決策として、、、により工期を短縮する(経済性管理)。この場合、リスクとしては、納期がタイトになることにより人出を増やす必要が発生するので、コストが増加する可能性が挙げられる(経済性管理)」

 

悪い例では、同じ管理の視点で物事を捉えており、視野が狭いですね。視野が狭い回答は大幅な減点が避けられません!回答する際には、気をつけましょう。

 今日はここまで!